2007年6月21日木曜日

ゴダール『二十一世紀の起源』(2000)

ゴダール『二十一世紀の起源』
(Jean-Luc Godard, De l'origine du XXIe siécle, 2000)
See (in Niconico doga)
1/3, 2/3, 3/3

 本作品はカンヌ映画祭の要請により、カナル・プリュスの共同製作で作られ、2000年の映画祭の開会式で上映された。ハンス・オッテのミニマル風の静謐なピアノ曲が流れる中、年号がシンプルに「1990」から「1900」まで15年ずつ遡って表示され、ヴァン・ヴォークト、ベルクソン、バタイユ、ギヨタらの断片が二人の男女によって読まれるとともに(男声はギヨタが受け持っている)、キューブリックの『シャイニング』、ゴダール自身の『勝手にしやがれ』のラストシーン、ロジェ・レーナルトの『最後の休暇』、マルローの『希望』、ドライヤーの『吸血鬼』などの映像が、戦争関連のニューズディールやポルノグラフィと混ぜ合わされて登場する。
 「失われた世紀を求めて」展開されるこの探求は、「GOULAG」から「LAGER」への語呂合わせ的な文字の変移に明瞭なように、コソヴォから第二次世界大戦に至る20世紀の惨禍をライトモチーフにし、技法的な観点からも『映画史』の付録のような位置を占め、また『アワーミュージック』の地獄篇に通じる作品となっている。
(『ユリイカ』2002年5月号「特集=ゴダールの世紀」、堀潤之「ゴダール・フィルモグラフィー 1987-2001」から抜粋・改変)

 director: Jean-Luc Godard
 script: Jean-Luc Godard
 music: ハンス・オッテ(Hans Otte
 text: ヴァン・ヴォークト(Van Vogt), アンリ・ヴァカン(Henri Vacquin), アンリ・ベルクソン, ジョルジュ・バタイユ, ジャン=ベニーニュ・ボシュエ(Jean-Benigne Bossuet), ピエール・ギヨタ(Pierre Guyotat)
 voice: ピエール・ギヨタ、ロナルド・アリエル・シャマ(Ronald Ariel Chammah)
 photo: ジュリアン・ハーシュ(Julien Hirsh)
 mix: フランソワ・ミュジー、ガブリエル・ハフナー(Gabriel Hafner)
 production: ヴェガ・フィルム(Vega Films)

対訳シナリオはこちら


* ボシュエ(1627-1704)はルイ14世に仕えた神学者であり、王権神授説を唱えた。数多くのテキストを残し、当時の文学者としても著名。
* ギヨタ(1940-)は小説家・舞台演出家。邦訳には『五十万人の兵士の墓』『続五十万人の兵士の墓』(二見書房)、『エデン・エデン・エデン』(ペヨトル書房)がある。ギュヨタ、ギュイヨタとも表記されている。
  ネットにある『エデン・エデン・エデン』についての記事:
  http://www1.ocn.ne.jp/~ppl/epaves01/guyotat.htm
  http://www.fuchu.or.jp/~d-logic/jp/books/edenedeneden.html
  また、演劇演出とゴダールの関係についての小文:
  http://homepage3.nifty.com/musicircus/ecm/ecm_ns/1706_9.htm
* シャマは、ゴダール作品にもたびたび登場したイサベル・ユペールの夫であり、監督作『鳶(Milan noir)』(1988)、ジャンヌ・フーシェとの共著(『イサベル・ユペール 肖像の女性』、Seuil, 2005)がある。


■追記(2007年12月14日)
 数ヶ月前のニコニコ動画運営側の調整によって、アカウントなしで見るためのニコニコ動画ビューアが通用しなくなったため、該当URLへのリンクは削除した。
■追記(2009年3月4日)
 仏/英/邦対訳シナリオのリンクを忘れていたので改めて付した。