2007年7月22日日曜日

ゴダール『二十一世紀の起源』 シナリオ採録+日本語試訳

(最終更新, 2009.6.3)
・ギヨタの朗読部分は俗語的に、音声を崩して仏語表記したものだと思われる。訳出は現在未対応。
・1/3、2/3、3/3の時間進行をそれぞれ対応させると表記・作業ともに煩雑になるので放棄。通しの時間軸で表記したものを使用した。ただし、目立たないが「--」でその切断部を表示する。 
・右側にまとめた挿入動画の指示は網羅的ではなく、抜けもある。短い挿入が連打されるために省略したものもあれば、単に記述漏れのものもある。
・仏語採録、英訳採録のテキストは『21世紀の起源』を含む四作を収録したJean-Luc Godard, Anne-Marie Miéville, Four Short Films(ECM CINEMA, 2006, DVD)のものを使用した。末尾表記によると英訳者はJohn Tittensorである。
 ※ギヨタ朗読箇所は依然として未訳ですが、テキストファイル置き場に仏語原文字幕srt/英語訳字幕srt/日本語字幕srtの3本をまとめた書庫をアップロードしておきました。日本語訳srtは邦訳2をもとにしながら少々いじってあります。(09.6.3)

『二十一世紀の起源』
De l’origine du XXIe siécle
当ブログの解説文記事
wikipediaの記事

(word on screen)
PREMIERE MAGE
2
1000
LE FESTIVAL
CANAL + OU -
PRESENTENT
(カナル・プリュスはフランスの有料チャンネル。ここでは、カナル・プリュスいう固有名詞を出しておいて、そのあとに「あるいはマイナス」とつけて、遊んでいると思われる。)
                          田園地方の路上、ヴァイオリンを弾く男、通勤者、自転車に乗る女。
                          女は通勤者に声をかける。(台詞部分は字幕未対応)
(word on screen)
L’OR             黄金
L’ORIGINE           起源
DE L’ORIGINE         起源について/そもそも
DE L’OR            黄金について/すばらしき
                          黄金の海(着色された映像)
DE L’ORIGINE        起源について/そもそも
                          女の悲鳴(Nouvelle Vagueから?)
                          事故の衝突音
DU XXIe SIÈCLE pour moi  私にとっての二十一世紀の
                          バスの乗客たち(映像)
                          暗転し、機関銃の連射音+短い悲鳴
(voice of Chammah)
Vous parlez tout le temps de guerres. Il ne pouvait pas être question de guerres. Ces gens étaient des hors-la-loi. On ne fait pas la guerre à des hors-la-loi. On les extermine. Des hors-la-loi ! Mon garcon, c’etait une grande époque. Oh! c’était du beau travail, une merveille d’organisation et d’audace dans L’exécution.
You’re always talking about the wars. It didn’t have anything to do with wars. These people were outlaws. You don’t wage war against outlaws. You exterminate them. Outlaws! My boy, that was a marvelous time! Oh, it was so well done ― so perfectly organized, so daringly carried out.

試訳1 いつも戦争のことが口にされるが、それは戦争そのものには何の関係もない。関係しているのは無法者たちの方だ。人は無法者たちと戦おうとはせず、絶滅させようとする。無法者たち! 坊や、何て驚くべき時代だろう。おお、戦争はなんと巧みに遂行され、なんと完璧に組織され、なんと恐れなく実施されることか。

試訳2 あんたたちはいつも、戦争という言葉を使う。(でもこれは)戦争ではありえなかった。これらの人々は法の外にいた。人は法の外にいる人たちと戦ったりはしない。殲滅するだけだ。法の外にいるんだってさ。坊や、ご立派な時代だったよ。そりゃあ、処刑時の足並みと大胆さは驚異的だったよ。たいしたもんさ。(この場合のHors-la-loiは、法的保護のないもの、人権のないものって意味の可能性も。要確認。あと、最後のほうは、皮肉まじり)


Il faut bien que tu comprennes que les homes, pris en masse, jouent toujours le jeu de quelqu’un d’autre… jamais le leur.
You have to understand that the mass of people always play someone else’s game… never their own.

試訳1 人々が集塊(大衆)をなしてゲームに興じる――決しておのれのゲームではなく他人のゲームを――ということを理解しなくてはならない
(「ゲームを興ずる」は英訳に引きずられて原文を理解し損ねた箇所)

試訳2 徒党を組むと、人々は、いつも、結局、自分ではなく、他人を利する行為をしてしまうのだということを理解しなくてはならない。
(faire [jouer] le jeu de … (結果的に)…に利する行為をする)


(voice of Guyotat)  [2:14-2:32]
l’pèr’ ses gars d’qual lit, l’aub’, rouler ses rest vivants dessus ses goulots éclatés, ma cherie, sa joue roz’ l’oreiller brodé d’or d’quall’ poubell’ fourchié mon aîné d’avent mes trios lits debout feux, possiàr, grinç’ ments d’dents, d’lam’
(word on screen)
1990
                              …
                          縄で首を吊るし上げられる男(映像)
                              …        
                          顔を割られて流血する男(映像)
                          小便を飲まされる女(映像)
                          路上で倒れている女(映像)

(voice of Chammah)
L’esprit emprunte à la matière les perceptions d’où il tire sa nourriture, et les lui rend sous forme de movement, où il a imprimé sa liberté.
The spirit borrows from matter the perceptions it draws its nourishment from, and gives them back as movement stamped with its freedom.

試訳1 精神にとっての滋養は知覚から引き出されるのだが、知覚は精神が物質から取り入れる。そして精神は、自由を刻印された運動のかたちをとって知覚を物質に送り返す。
試訳2 精神は物質からいろんな知覚を受け取り、そこから自分の栄養を引き出す。そして、物質に対してその知覚を送り返す。(…)


(voice of Guyotat) [3:50-3:59]
d’quà ta faç’ mâchiurée d’chiarogn’rat ― l’relent tueur en refaufiler sa lam’ d’ dans sa taill’ ! ―, l’moushiassat t’en rentrer s’assoupir
                          戦争のニュースリール(白黒映像)

(word on screen)
1990
1975
                          ピアノ音開始
                          子供がホテル内をカートで走り回る(『シャイニング』から挿入)
                          中東の軽トラの後部から見える外景(映像)
Guyotatでもない別の男性が挿入(冊子未対応)[4:35-37]
                          微笑む女のクロースアップ(映像)
                          路面線路に沿って転がる死体群(白黒映像)
(voice of Guyotat) [5:00-5:11]
leur changer chairs os sang reporcréer leur descendanç’ ?, desintegréa ― fracas, lueur, relent m’evailler ?, non ! ―
                          死体が散らばる虐殺現場(白黒写真)
                          連れ立って家から出て行く子供たち(コマ送りされた白黒映像)
(voice of Chammah)
Eloïm fit sortir les vivants de la terre. L’essentiel sera dit en Eden, qui signifie volupté, ou délices. Le jardin de l’Eden, c’est jardin de délices. Cultiver le jardin, c’est prendre soin de ces derniers. Garder le jardin, c’est le preserver et transmettre le trésor qui y aura été reçu. Dans cet Eden, il sera fait don de tous les arbres. Et puis, presque aussitôt énoncée, la première interdiction, le « non », le « ne pas ». Et ceci sous peine de mort.
Elohim brought the living out of the Earth. The basic message came across in Eden meaning voluptuousness and delight. The Garden of Eden is the garden of earthly delight. To cultivate this garden is to take care of those delight. To look after the garden is to preserve and pass on the treasure received there. In this Eden all trees were given as a gift. Almost immediately thereafter came the first prohibition, the “No”, the ”Not”. Under pain of death.

試訳1 ヤハウェは生者を地上から連れ出した。エデンで言われることの核心は、官能性と歓喜にある。エデンの園を養うこととはおのれの歓喜を引き受けることだ。エデンの園に配慮することとはそこで得られた富を失わないようにし、人に伝えることだ。エデンの園においてはすべての木々は天与のものだった。およそエデンからの追放の直後以来、最初の禁止が到来した。すなわち、死の痛みのもとでの「否」だ。
(NoとNotの訳し分けがない等のミス)

試訳2 エロイム(神)は生者たちをかの地から追い出した。エデン(という言葉?)の中で本質的なことが言われているのだろう。エデンとは、逸楽や悦楽を意味する。楽園を大事にする(庭を耕す)ことは、悦楽や逸楽を大切にすることである。楽園(庭)を維持することは、楽園を保存し、楽園で今後与えられるであろう宝を受け継いでゆくことである。そのエデンでは、木々という木々がすべて与えられるだろう。そしてすぐさま最初の禁止事項「だめだ」「してはならない」が発せられるだろう。死罪を伴った禁止事項が。(最初の一文だけ歴史的な事態として単純過去形。それ以降の文は楽園追放以前と思われる)
(Faire don de A à B AをBに与える。受身の場合、形式主語を伴いやすい Il est fait de A Aが与えられる。)
(悦楽とは、味わうことなく保持され受け継がれるしかないもので、ひとたび味わおうとするとすべてを失ってしまう、というのが「本質的なこと」か?)


                          結婚式の新郎新婦が、片方は着靴で片方は裸足で
                          敷石の上を投じられた花束を踏みつけながら歩く(映像)
                          足首に飾りをつけた女たちが、石の上で洗濯物を裸足で踏みつけて歩く(映像)

                          ピアノ音開始
                          裸足や着靴で道を進む人たち(白黒映像)
                          粗末な布靴をつけて外を歩く、足枷をつけた囚人(白黒映像)
                          両足を引かれて運ばれる裸足の死体(白黒映像)
(word on screen)
À LA RECHERCHE DU            を求めて
À LA RECHERCHE DU SIÈCLE     世紀を求めて
À LA RECHERCHE DU SIÈCLE PERDU 失われた世紀を求めて
                          慟哭する女たち(壁画)
                          ベトナム人ゲリラの反撃と空爆(映像)
女声が挿入(冊子未対応) [6:35-6:37]
■注 Qu’est-ce que c’est des glaces? と聞こえるが自信なし。


--
(word on screen)
1975
1960
セバーグのクロースアップが一瞬挿入される
(word on screen)
1960
1945
                          ピアノ音開始(『アワーミュージック』でも使用されたパート)
                          (おそらく)アメリカ兵士の出国セレモニー(白黒映像)
                          ボートを漕ぐ男女(ロジェ・レーナルト『最後の休暇』からの挿入?)
                          中東の街路の人々(白黒映像)
                          草野をあてどなく歩く和服の女が、木椅子に腰掛ける。
                          そこに野武士が来て、乱暴をはたらく
                          (溝口健二の『近松物語』から? ■注 『山椒大夫』ではないかという示唆を受けた)
                          火事の民家に駆けつける男たち(白黒映像)
                          中東での民衆とアメリカ兵士とのやりとり(白黒映像)
                          それを見つめる女子供たち(白黒映像)
                          荒野での爆発(白黒映像)
                          フランスの都市を煙草を吸いながら歩く男(白黒映像)
                          アメリカによる空爆/逃げるベトナム民衆(対比的に切り返してつなぎ直し。白黒映像)
                          爆発の黒煙(白黒映像)
                          頭部を負傷した男(白黒映像)
                          列車から戦車の縦列を見る少年(何らかの映画からの挿入?)
                          空爆をする兵士のカメラ位置である、空から映された荒野(白黒映像)
                          …

(word on screen)
LÈVE-TOI JE TE L’ORDONNE       起きろ。これは命令だ。
                          微笑む少女のバストショット(何らかの映画からの挿入?)
                          雪中行軍する兵士たち(白黒映像)
(word on screen)
LES PLUS BELLES ANNÉES DE NOTRE VIE 我らの生の最も美しい年代
                          路肩に転がる死体群(カラー映像)
                          舞踏会のシーン(何らかの映画から)

(voice of Guyotat) [9:47-10.19]
avant, ton someil, y quitter ton pèr’terrestr’ amour ! ―, quaqu’ terr’ un rumeur humain’ arrêtée Diou m’parler d’dans l’oraill’, m’remuer mes lèvr’ Lui repondr’ l’tourbillon tracer le mots d’dans l’sabl’ d’entr’ mes pieds, l’ radillon pave quaqu’misèr’ l’ poang moangnon, aux dents l’poisson happé l’ rebut d’etal les commis l’courir tranchier son poang droit !, me d’entr’, bondir arranchier l’possion aux mâchoir’ !

                          林中を逃げる和服の女。女が上着を脱ぐ
                          (同様に同じ溝口作品からだと思われる)
                          温泉につかる男がそれを見る(ようにつなぎ直された、別の日本映画からの挿入)
                          三色に汚れて怪物のようになった男(ジェリー・ルイス『底抜け大学教授』終盤から)
                          それを見る黒猫(カラー映像)
                          絡み合う男女(何らかのポルノグラフィから挿入?)
                          それを見る黒猫(カラー映像)
                          床を這いずり回る三色に汚れた男(ジェリー・ルイス『底抜け大学教授』終盤から)

-10.19
(voice of Chammah)
Rien n’est plus contraire à l’image de l’être aimé que celle de l’Etat, dont la raison s’oppose à la valeur souveraine de l’amour. L’Etat n’a nullement, ou il a perdu, le pouvoir d’embrasser devant nous la totaltié du monde. Cette totalité de l’univers donnée en même temps au dehors dans l’être aimé comme un objet, au dedans dans l’amant comme sujet.
Nothing conflicts more with the image of the beloved than that of the state. The state’s rationale directly opposes the souvereign value of love. The state in no way possesses, or else it has lost, the power to embrace, before our eyes, the totality of the world, that totality of the universe offered externally via the loved one as object, and internally via the lover as subject.

試訳1 恋人たちのイメージを妨害するものがないのと同様に、国家のイメージを妨害するものは無い。国家の根拠は愛の至上価値に対立するものだ。(愛とは違って)世界の全体性を把握する権力を、国家は何も所有しない、あるいは失っているのだ。世界の全体性とは、客体である愛される者から内的に、主体である愛する者から外的に同時に与えられる、宇宙の全体性のことだ。(「妨害するものはない」は英訳に引きずられてやや主旨の取り違えたもの)

試訳2 国家のイメージほど、愛する相手のイメージと反するものはない。というのも、国家の道理は、愛の至高の価値(主権の価値)に反するから。国家は、われわれの前で、世界全体を抱擁する(包み込む)力をまったく持っていないかすでに失ってしまっている。その世界全体は、客体としての愛される側の中では外側にあり、同時に、主体としての愛する側の中では、内側にある。
(Donné ... comme objet (sujet)  対象(主体)として与えられるの意味とも思ったが、朗読ではそういう区切りではないので、こういう訳し方はしなかった)


                          ケネディの横顔(白黒映像)
                          逆光で映される、煙管を銜えた男の上半身(白黒写真)
                          (おそらく)パリの街路と街角で男が構える銃+発砲音(白黒映像)
                          雨に打たれる女(白黒映像)
                          その女が前を歩く男の背にもたれかかる(白黒映像)

                          (ピアノ音が続く)
                          遺跡から発掘される白骨死体(白黒映像)
                          花に包まれたスターリンの死体(白黒映像)
                          ヒトラーのクロースアップ(映像)
                          男声が挿入 [11:03-]
                          車を狙う大砲(映画からの挿入? 白黒映像)
                          こめかみに手を伸ばす女のクロースアップ(おそらく映画から挿入。白黒映像)
                          横から撮られた車の乗車席(映画からの挿入? 白黒映像)
                          先程の大砲が発射する(映画からの挿入? 白黒映像)
                          先程の女が視線を上げる(おそらく映画から挿入。白黒映像)
                          銃口を真正面からとらえたクロースアップ(白黒映像)
                          乗車席から進行方向へ機関銃を構える男を真正面から映す(映画からの挿入? 白黒映像)
                          空に羽ばたく鳥の群れ(白黒映像)
                          先程の女が再び目を伏せる(おそらく映画から挿入。白黒映像)
                          死体のように地面に伏している男(白黒映像)

--
(word on screen)
1960
1945
1930
                          [11:28]
                          (ここでピアノ音が大きくなる+別の旋律へ移行)
                          打ち寄せる波(白黒映像)
                          大型船を遠景に湾岸で紙を束ねる二人(白黒映像)
                          半裸で舞う黒人女とそこに同席する着衣の白人男女(白黒映像)
                          船上から海面を望む(白黒映像)
                          片手を掲げて街頭を練り歩く初老の男女(白黒映像)
                          短い男声が挿入(冊子未対応)
                          門に入る車とそれを通す門兵(色彩対比を強調加工された映像)
                          腕を組んでカメラを睨む、長机に並んだ子供たち(白黒映像)
                          馬車で運ばれてい死体の山(白黒映像)
                          鍵盤が上下する自動ピアノとそれを見つめる男女(白黒映像)

[12:12]
(word on screen)
1930
1915
                          睨む女のクロースアップ(映画から。白黒映像)
                          睨む男のクロースアップ(映画から。白黒映像)
                          (ピアノ音が徐々に遠ざかっていき、停止)
                          [12:27]
                          先程の睨む女のバストショット(映画から。白黒映像)
                          騒ぐ群集(劣化か合成のために黒い染みと混ざっている。白黒映像)
                          重量感のある機械の動き(白黒映像)
                          薄い帽子をかぶって駆ける群集(白黒映像)
                          (ピアノ音が再び開始) [12:39]
                          スカーフで髪を隠して自転車に乗る女が真っ赤なトラックとすれ違う(色彩加工された映像)
                          風呂場で騒ぐ女たち(白黒映像)
                          赤い服を着て踊る子供たち(顔を灰色に、服を赤く着色加工された映像)
                          飛行機の離陸とそれに駆け寄る軍人たちと群集(全体に赤茶で色彩加工された映像)
                          送り出す女たち(全体に赤茶で色彩加工された映像)
                          走る列車(白黒映像)
(word on screen)
KONEC         終わり(チェコ語)
■注 おそらく、強制収容される東欧の人間にとっての死を強調して、チェコ語表記を用いている

GOULAG        グラーグ
■注 旧ソ連時代の強制収容所。もともと「収容所管理総局」(Glavnoe Upravlenie Lagerei)の略称。しだいに集中収容所を管理する官庁の名称だけではなく、ソ連の奴隷労働システムそれ自体をそのあらゆる形態や多様性──労働収容所、懲罰収容所、刑事囚および政治囚の収容所、女性収容所、児童収容所、中継収容所──をひっくるめてあらわす用語にもなった)


                          側溝に沿って移動する人たち(白黒映像)
LAGER       ラガー
■注 ナチスの強制収容所。正式には「Konzentration(集中) Lager」(略称「KZ」)であり、ロシアではラーゲル(lager)、ラーゲリ(lageri)と呼ぶ)

                          吊られた死体が煙にいぶされる(白黒映像)
                          路傍で死んでいる女性の安否を確認する男(白黒映像)

(voice of Chammah)
Comme le corps et l’âme s’altèrent mutuellement par le mélange, il faut les séparer pour les bien connaître. En effet, la société fait que le corps nous paraît quelque chose de plus qu’il n’est, et l’âme quelque chose de moins. Mais lorsque, venant à se séparer, le corps retourne à la terre et que l’âme aussi est mise en état de retourner au ciel, nous voyons l’un et l’autre dans sa pureté.
Since the body-soul paring means each deforms the other, we must separate them to know them properly. The society makes the body seem something more than it is and the soul something less. But once separaterd, when the body returns to earth, and the soul is able to return to heaven, we see both in all their purity.

試訳1 身体と魂は混ざり合っているので互いに変質させあっている。よって、それぞれをよく知るためには身体と魂は分離させなくてはならない。実際のところ社会は、身体の現れ方を実際のありよう以上のものに変えてしまい、魂の現れ方を実際のありよう以下のものに変えてしまう。だが、それぞれを分離してみるとき、身体は地上へ、魂は天上(天国)へと送り返され、私たちは二つを純粋に見ることができるようになる。

試訳2(修正部)(…)社会のせいで、身体は、実際のそれ以上の何かに見えるようになっており、魂は、実際のそれ以下の何かに見えるようになっている。(…)私たちは、それぞれを、純粋な形で目にする。


                          顔面から流血する赤子(映像)
                          街路を覆ってはためく赤い旗(コマ送りされた映像)
                          川に体が流れて、川辺の草から遠のいていく手(白黒映像)
                          川面の部分に棚引く草花が合成される(白黒映像)
                          果樹林の中、担架で運ばれる死体のような男(白黒映像)
                          兵士たちが蜂起(?)する光景(白黒映像)

(voice of Guyotat) [13:53-14:07]
l’jirarret boueux, l’ orbit’ eempossiàtrée, ta poitrin’ m’ trembler, l’ comptoir caiss’, ta mâchoir’, a’c, mes chievuex chiauds, d’ö、l’hors bordel, banlioue ?, Franç’ ?
■注 解説文でも紹介した「『エデン・エデン・エデン』 ピエール・ギュヨタの言葉と世界」では、「ギュヨタは去年«Progénitures»(人や動物の子供)という800ページの大作を出した。言語的冒険は『エデン』よりさらに過激になっている―『エデン』が古典的に感じられるほどに」という箇所の注に、「冒頭、娼家の会計の女が労働者に話しかけるところ」としてこの朗読箇所が引用されている。この作品でのギヨタの朗読箇所はProgénitures(2000, 未邦訳)からと見ていいのかもしれない。

                          胸を服から引きずり出して抱擁する男女(白黒映像)
(word on screen)
1915
1900
                          紳士と踊り子たちのカンカン踊りとふざけあい(『映画史』にも出てきた挿入。白黒映像)
                          男女の歌声が重ねられていく。
(voice of two men)
« Est-ce que ce n’est pas le bonleur ? »
« Tout de même, tu m’avoueras que tout cela est bien triste. »
« Mais mon cher, le bonleur n’est pas gai. »
“Isn’t this perfect happiness?”
“Come on, you have to admit it’s all pretty sad.”
“But, my dear fellow, happiness isn’t enjoyable.”

試訳1 「これは完璧な幸福なのかな?」
「ほら、君はこれがすべて悲しいものだってことを認めなきゃいけない」
「でも貴方、幸福って喜びじゃないんだよ」
(have toの意味を「~しなくてはいけない」と訳したが、原文を見るとwillなどでも良さそう)

試訳2 「これが幸福ってものでしょ?」
「でも、その一切合財がとても陰気なものだってことを、君はそのうち認めるだろうよ。」
「貴方、そもそも幸福って楽しいものじゃないのよ。」


                          笑い声が高鳴るが、男は力尽きて床に倒れる。(同上)
                          それに気づいた女が近寄る。(同上)

                          浜辺で土を掘り返して山を作る数人の子供(粗い白黒映像)
                          “Vive la ?au?”と黒板に書き、振り返って微笑む女(白黒映像)
                          馬上の男を遠景に、青・黒・赤の三色旗がはためく(着色された白黒映像)

musique: Hans Otte
texts: Van Gogt, (Henri) Vacquin, (Henri) Bergson, (Georges) Bataille, (Jean-Benigne) Bossuet, (Pierre) Guyotat
voix: (Pierre) Guyotat, (Robald Ariel) Chammah
photo: (Julien) Hirsh
son: (François) Musy, (Gabriel) Hafner
production: Vega films
このスタッフロールを「()」「:」「,」部分と改行処理を省略し、空白無し・大文字表記で一画面でまとめている