ゴダール『子供たちはロシアで遊ぶ』
(Jean-Luc Godard, Les enfants jouent à la Russie, 1993, 60m. video)
script & editing: Jean-Luc Godard
camea: キャロリーヌ・シャンプティエ(Caroline Champetier)
mix: ステファヌ・ティエボー(Stéphane Thiébaut)
cast: Jean-Luc Godard(白痴), ラズロ・サボ(Laszló Szábó)(ジャック・ヴァレンティ(Jacques Valenti), Andrès S. Labarthe(私立探偵アルシド・ジョリヴェ(Alcid Jolivet)), Bernard Eisenchitz, オード・アミオ(Aude Amiot), ベネディクト・ロワイヤン(Benedicte Loyen)
production: Vega Films, ペリフェリア(Périphéria)
See(in Niconico Doga)
1/3, 2/3, 3/3
アメリカの製作者が各国の監督に発注した「重大事件:90年代のロシア」というTV番組の一篇。アメリカ人の製作者ジャック・ヴァレンティがロシアに旅立つ(旅立たない)までの模様が描かれるなか、映画や文学作品や実映像が重層的に挿入され、そこに様々な考察が重ねられる。主題となるのはロシア文学とソ連映画である。ゴダールはこう述べる。「なぜ西洋はこの国を侵略しようとするのか? それはここはフィクションの生地であり、西洋人はフィクションを発明することができないからだ」。「ロシア人はわれわれのように映画の発明を体験しない。列車が駅に到着する時、彼らはリュミエール兄弟のことではなく、アンナ・カレーニナのことを考える。彼らはその若い女性が列車の下に身を捧げるのを見る」。
(『現代思想』1995年9月臨時増刊号「総特集=ゴダールの神話」、「フィルモグラフィ」の細川晋執筆の項から抜粋)
ゴダール自身が『映画史』の補遺とみなすこの作品は、アメリカ人製作者ジャック・ヴァレンティ(ラスロー・サボー)がスイスの空港で「白痴」と呼ばれる映画監督(ゴダール)に会って映画を作らせるという筋に、ロシア文学とソ連映画をめぐるゴダール流の省察が加えられる作品である。『映画史』完成後に目録作業を手伝った映画批評家のベルナール・エイゼンシッツや、『新ドイツ零年』で語り手の声を担当したアンドレ・ラバルトも出演している。ソ連については、ハリウッドの「夢の工場」と比較するかたちで、すでに『映画史』1Aで大きく扱われていた。本作品で扱われる様々なエピソードのうち、ポンスレがモスクワの牢獄で射影幾何学を構想したという投影=映写の起源をめぐる挿話は、ほぼ同じ映像の展開で『映画史』2Aで反復される。また、3Bに出てくる文字タイトル「エルスヌールと言っても何も言ったことにはならない/ハムレットといえばすべてを言ったことになる」は、「映像」に対応するロシア語の二つの単語をめぐる本作品での議論を圧縮したものである。
(『ユリイカ』2002年5月号「特集=ゴダールの世紀」、堀潤之「ゴダール・フィルモグラフィー 1987-2001」から抜粋)
■追記(2007年12月14日)
数ヶ月前のニコニコ動画運営側の調整によって、アカウントなしで見るためのニコニコ動画ビューアが通用しなくなったため、該当URLへのリンクは削除した。
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