2007年12月26日水曜日

ゴダール『アルミード』(1987)

ゴダール『アルミード』
(Jean-Luc Godard, Armide (sketch d’Aria), 1987, 12m) 
 director: Jean-Luc Godard
 script & editing: Jean-Luc Godard
 cast: マリオン・ピーターソン(Marion Peterson)(Les Jeunes Filles), ヴァレリー・アラン(Valérie Allain)(ibid), ジャック・ヌヴィル(Jacques Neuville)(Bodybuilder), Luke Corre(ibid), Christiam Cauchon(ibid), Philippe Pellant(ibid), Patrice Linguet(ibid), Lionel Sorin(ibid), Jean Coffinet(ibid), Alexandre Des Granges(ibid), Gérard Vives(ibid), Frederick Brosse(ibid), Pascal Bermont(ibid), Jean Luc Corre(ibid), Bernard Gaudray(ibid), Dominique Mano(ibid), Patrice Tridian(ibid)
 camera: キャロリーヌ・シャンプティエ(Caroline Champetier)
 music: composer: ジャン=バチスト・リュリ(Jean-Baptiste Lully) conductor: ?
 song: ラシェル・ヤカール(Rachel Yakar), Zeger Vandersteene(定着したカタカナ表記がなく、ファーストネームはゼゲルorゼーガorゼーガーorゼーゲルorゼガーorツェーガーorツェーゲル、セカンドネームはファンデルステーネorファンデルスティーネorヴァンデルシュテーンorヴァンデルステーネorヴァンデレスティーンorバンデルステーンor・ヴァンダーシュティーネと、ばらばらに見かける), ダニエル・ボルスト(Danielle Borst)
(※引用者注 歌ってる人と出演者が別個になってるように、二人の女優はいくつかの断片を叫ぶところ以外は、口パクシーンも含めて背景の歌はYakarやVandersteene、Borstが担当。この三人はクラシック声楽プロなのですが、共演しているLullyのCDは見つからなかったので、再販されていないCDなのだろうと思います。ゴダールがまさかクラシックの歌い手を指揮したとも思えないので。なお、Jean-Francois Paillard指揮版ならLullyの「Lully: Te Deum; Dies Irae」が去年出ており、Vandersteeneも参加しています。
 production: Lightyear Entertainment, Virgin Vision
See (in Niconico doga) 1/2, 2/2
 flvエンコードなしでupしたら、見事にyoutubeよりも劣化したので、youtubeのflvファイルをそのまま転載します。どっちも英語字幕つきで、同じソフトからのようなので。※2/2をupした直後(約3分以内!)、2/2は削除、「利用規約違反」扱いで1日間のアカウント停止食らいました。残骸1 残骸2
See (in Youtube) 1/2, 2/2

 10人の監督に、それぞれが霊感を受けるオペラのアリア、ないしはそれに準ずる歌曲を選ばせ、それに合わせて自由に映像を作らせたオムニバス映画の一挿話。ゴダールが選んだのは、リュリのバロック・オペラ「ルノーとアルミード」だ。たくましい男たちが黙々と筋力トレーニングを行うジムで、そこに勤める二人の少女はある男に心を惹かれるが、男は彼女たちの愛撫や若々しい裸体にも無関心だ。少女たちは苦悩し、動揺する。
(『現代思想』1995年9月臨時増刊号「総特集=ゴダールの神話」、「フィルモグラフィ」の細川晋執筆の項から抜粋)
 リュリは、ルイ14世のお抱え作曲家で、フランス・バロック期を代表するオペラ作曲家(1632-87)。wikipedeia内の項目。「ルノーとアルミード」(Renaud et Armide, 1968)はフランスの十字軍の騎士ルノーとアルミードの運命を歌ったアリアであり、トルクァート・タッソ『解放されたエルサレム』(1575)を素材にしている(『解放されたエルサレム』には邦訳単行本が無く、わずかに第1歌~第3歌が京都外国語大学の研究機関誌『研究論叢』に岩倉具忠訳があるのみ[vol.55,57,59, 2000-2002]。Project Gutenberg内の英訳。cf. wikipedeia内の項目)。なお、コクトーに同題の戯曲があり(1943年)、ゴダールが直接に意識していたのはこの作品なのかもしれない。

オムニバス映画『アリア』(IMDb内項目)

MovieWalker&キネマ旬報による10作品の解説とストーリー (書式はあらためて構成しなおした)
世界有数の音楽家によるアリアを10人の監督たちがそれぞれ自分のテーマにそって選んで描いた10篇から成るオムニバス映画。製作はすべてドン・ボイド。
1. 〈仮面舞踏会〉(Un balo in maschera) See(in Youtube) 1/2, 2/2
 ヴェルディ作曲のメロドラマ・オペラ。監督は「マリリンとアインシュタイン」のニコラス・ローグ、撮影はハーヴェイ・ハリソン、編集はトニー・ローソンが担当。出演はテレサ・ラッセルほか。
 1931年、ウィーン。アルバニアのゾグ王(テレサ・ラッセル)はオペラ・ハウスに公式訪問中、美しい男爵夫人(ステファニー・レーン)と熱い視線を交わす。舞台を満たす華やかな仮面の人々。やがて、オペラを見終え、出口へ向かう王と従者たち。次の瞬間、待ち構えていた数人のアルバニア亡命者から発射される銃弾で、その場は血の海と化すのだった。しかし、倒れた人々の中に王の姿はなかった。
2. 〈運命の力〉(La virgine degli angeli)
 ヴェルディの宗教的な作品をチャールズ・スターリッジが監督。撮影はゲイル・タタソール、編集はマシュー・ロングフェローが担当。出演はニコラ・スウェイン、ジャック・カイルほか。
 クレモナの聖堂の祭壇の上の聖母マリアと御子の絵画。絵画の中の御子は聖母に救いを求めるように聖母の視線を追う。3人の子供たち、ケイト(マリアンヌ・マクローリン)、マリア(ニコラ・スウェイン)、トラヴィス(ジャック・カイル)は学校をさぼり、ドライヴを始める。やがて3人の車はパトカーに追跡され、後には散乱し燃えた車の破片が……。
 See 1,2 (in Niconico Doga)
3. 〈アルミードとルノー〉(Armide)
 フランスの十字軍の騎士ルノーとアルミードの運命を歌ったリュリーのアリアを「ゴダールの探偵」のジャン・リュック・ゴダールが監督。撮影はカロリーヌ・シャンペティエ、編集はゴダール。出演はマリオン・ピーターソン、ヴァレリー・アランほか。
 時代は現代。スポーツ・センターで身体を鍛えている若者たち。掃除に来た娘は一人の若者に魅せられる。彼は彼女の存在に気づかない。この時、彼女の中にアルミードと同じ怒りがわき、彼の背にナイフをかざすのだった。
4. 〈リゴレット〉(Rigoletto)
 放埒な公爵に娘をもてあそばれた道化師リゴレットの復讐を描いたヴェルディのヒット・オペラをジュリアン・テンプルが監督。撮影はオリヴァー・ステイプルトン、編集はネール・アブラムソンが担当。出演はバック・ヘンリー、アニタ・モリスほか。
 中年の映画プロデューサー(バック・ヘンリー)が、スウェーデン女優(ビヴァリー・ダンジェロ)をアメリカのマドンナ・インに連れていく。このホテルにはそれぞれの部屋にテーマがつけられている。たとえばネアンダルタール・ルームなら、岩穴が型どられた部屋というように……若い男を連れたプロデューサー夫人(アニタ・モリス)がなんと、そのホテルにやってきた……。
5. 〈死の都〉(Die tote Stadt)
 亡き妻の幻に縛られている男をテーマにしたコルンゴルトのアリアをブルース・ベレスフォードが監督。撮影はダンテ・スピノッティ、編集はマリー・テレーズ・ボワシュ、美術はアンドリュー・マッカルパインが担当。出演はエリザベス・ハーレイほか。
 ベルギーのフルージュに住む男(ピーター・バーチ)は亡き妻が忘れられない。この町自体、死の雰囲気を漂わせ、彼はその呪いに縛られている。ある日彼女にそっくりなダンサーに会い、家につれてくる。そして、かつて妻の演奏に合わせて歌ったリュートを贈る。
6. 〈アバリス〉(Les Boréades)
 ラモーのアリアを「フール・フォア・ラブ」のロバート・アルトマンが監督。撮影はピエール・ミニョー、編集はアルトマン、美術はスティーヴン・アルトマンが担当。出演はジュリー・ハガティ、ジュヌヴィエーヴ・パージュほか。
 18世紀には、一般人が料金さえ払えば、動物園に動物を見にいくように精神病院を見学することができる。貴族の気まぐれの楽しみのために、患者たちがオペラに参加させられることもあったのだ……。
7. 〈トリスタンとイゾルデ〉(Liebestod)
 愛と死をテーマにしたリヒャルト・ワグナーのオペラをフランク・ロッダムが監督。撮影はフレデリック・エルムス、編集はリック・エルグッドが担当。出演はブリジット・フォンダ、ジェームス・マザーズほか。
 ラスヴェガス。まるで昼間のような明るいライトが照らされる一室で若い2人(ブリジット・フォンダ、ジェームズ・マザーズ)が愛を交わし、心を開く。
8. 〈トゥーランドット〉(Nessun dorma)
 中国の皇帝トゥーランドットをテーマにしたプッチーニのアリアを「狂えるメサイア」のケン・ラッセルが監督。撮影はガブリエル・ベリスタイン、編集はマイケル・ブラッドセルが担当。出演はリンジ・ドリュー、アンドレアス・ウィスニュースキーほか。
 自分を縛っている邪悪な惑星土星の輪から少しずつ逃れようとする若い女性。彼女は神官と3人の巫女たちによって体の様ざまな部分に夥しい宝石がつけられていく。
9. 〈ルイーズ〉(Depuis le jour) See(in Youtube)
 シャルパンティエのアリアを「カラヴァッジオ」のデレク・ジャーマンが監督。撮影はマイク・サウソン、編集はピーター・カートライト、アンガス・クックが担当。出演はティルダ・スウィントンほか。
 恐ろしく年をとったレディ(エイミー・ジョンソン)が舞台でカーテン・コールを受ける。今、彼女の脳裏には若かりし頃の自分(ティルダ・スウィントン)の愛の日々が甦ってくる……。
10. 〈道化師〉(I pagliacci)
 レオンカヴァルロのアリアをビル・ブライドンが監督。撮影はガブリエル・ベリスタイン、編集はマリー・テレーズ・ボワシュが担当。出演はジョン・ハートほか。
 道化師(ジョン・ハート)は、舞台に上り、自分の人生をふり返る。舞台で演じる役と実像が重なる彼……。