2007年12月28日金曜日

ゴダール&ミエヴィル『芸術の幼年期』(1990)

ゴダール&ミエヴィル『芸術の幼年期』
(Jean-Luc Godard, Anne-Marie Miéville, L’enfance de l’art (sketch de Comment vont les enfants / How are the kids), 1990, 8m)
director: Jean-Luc Godard, Anne-Marie Miéville
script: Jean-Luc Godard, Anne-Marie Miéville
production: JLG Films, UNICEF
See (in Niconico Doga)

ユニセフがTV用に作った、世界の子供たちの基本的人権を巡る六話オムニバス番組の一挿話。「子供たちは戦争に行かなくてよい権利と教育を受ける権利を持つ」という命題に基くゴダール=ミエヴィル篇では中東における戦闘、女性、爆撃下の廃墟でサッカーをする子供の映像が示される。ある兵士がドラクロワの名画「民衆を導く自由の女神」の絵葉書の裏に書いた言葉を、それを拾った女が子供に読ませる。「あらゆる影響力の中で、最もひどいものは? それは? 思想だ」。
(『現代思想』1995年9月臨時増刊号「総特集=ゴダールの神話」、「フィルモグラフィ」の細川晋執筆の項から抜粋)

 ミエヴィルとの共同監督による本作品は、ユニセフ製作で「子供の基本的人権」を扱った六話オムニバスのTV番組『子供たちはどうしているのかHow are the kids?』の一挿話である。ある女性が少年に暴動と叛乱をめぐるテクストを読んでいる。ベイルートを思わせる荒れ果てた市街地では、男たちが戦っている。『レ・ミゼラブル』を手に持った女性が、バズーカを持って壁の後ろに隠れている兵士にキスをする。子供たちは砲弾の音がする中、サッカーに興じている。ある兵士が、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」の絵葉書の裏に、「あらゆる暴虐のうち、最もひどいのは……」と書いたところで、銃弾に命を取られる。それを拾った女性は、そのフレーズを子供に読ませる。「あらゆる暴虐のうち、最もひどいのは思想の暴虐である」。本作品は、「戦争をしない権利」、「教育の権利」という二つの文字タイトルで締め括られる。『映画史』3A冒頭のユゴーのテクストにも通ずる、90年代におけるゴダールの政治的コミットメントの姿勢を示す作品である。
(『ユリイカ』2002年5月号「特集=ゴダールの世紀」、堀潤之「ゴダール・フィルモグラフィー 1987-2001」から抜粋)